老いの何だか切ない日々のポエム画廊喫茶

朝起きて今日一日が始まるコーヒーを淹れるときめき。残りの人生、毎日全力投球。

春を待つちぐはぐのままの靴下


  思議なる絵本の夢や春隣


 3,4日前に不思議な絵本の夢を見ました。
それはどこかのローカル電車に乗っていた時のことです。
向いの座席に、お爺さんと4,5歳の孫らしき男の子が座りました。
男の子は、買ってもらったばかりのような、まだ包装紙に包まれた四角い大きな硬い本らしきものを膝に乗せて両腕で抱えていました。
「おじいちゃん、開けて見ていい?」
もう嬉しくて嬉しくて、早く見たいとお爺さんに訊きます。
「ああ。開けてごらん。わしが開けてあげよう。」
お爺さんが、止めてあるテープを剥がして袋から取り出してあげました。
「わーい。」
それは大きな絵本でした。白い表紙に、水色の文字で「白い絵本」と書かれてありました。
男の子はワクワクしながら捲ってみました。
すると、開いたページは真っ白でした。急いで次のページを開いてみました。するとそのページも真っ白です。「あれっ?」と、ベソをかきながら次のページを捲りましたが、そこも真っ白でした。次のページも次のページも真っ白のままです。
男の子は泣きだしそうになりながらお爺さんの顔に訴えました。
するとお爺さんはニコニコしながら、「かーくん、白いページに、かーくんの好きなお花を思い浮かべてごらん。」と言いました。
かーくんは真っ白なページに、大好きなチューリップを思い浮かべました。
するとどうでしょう。真っ白だったページいっぱいにチューリップの花の絵が生き生きと現れたのです。それは本物のように、お日様の下で楽しそうに風に揺れているのです。赤、黄色、桃色、オレンジ色に白と、色とりどりです。
真っ白だったページが、次のページも次のページもチューリップの絵になっています。
そしてさらに不思議なことが起きました。
「かーくん、窓を見てごらん。」
「うわあー!」
窓を見ると、木のように大きなチューリップが手を振るように揺れていました。前も後ろもです。大きなチューリップが線路沿いにびっしりとかーくんの乗ってる電車を見送っていたのです。
ページを捲ってると電車の中にもチューリップが咲いてるようです。大好きなチューリップに包まれて進んで行きます。
チューリップもみんな楽しそうです。
「チューリップ チュッチュッチュッ チューリップ」
思いつきのまま歌います。もう床をゴロゴロしたいほど楽しくて仕方ありません。


 やがて、降りる駅に着きました。
「かーくん、かーくん、降りるよ。」
「うーん。」
うつらうつらしていたかーくんは、眠そうな声で本を閉じながら返事をしました。
それから、伸ばしてるお爺さんの手を握りました。
そして床に降りて振り向くと、不思議そうに「あれれ?」とつぶやきながら窓を見ました。
右も左も、両サイドの窓にはもうチューリップはありませんでした。
かーくんは、「夢を見てたのかな?」と、降りて本を開いて見ました。
すると、チューリップの絵はどこにもなくて、ページはみんな真っ白でした。
私も不思議に思いました。
たしかに私も見ていましたから。