老いの何だか切ない日々のポエム画廊喫茶

朝起きて今日一日が始まるコーヒーを淹れるときめき。残りの人生、毎日全力投球。

詩「見えないキップ」


病院に向かう
バスの 窓から
石や木に 風に
開きかけた
新芽たちに
おじいちゃんを
助けてよと
いっしょうけんめい
お願いしたんだ
だけど
春の雪の降る日
おじいちゃんは
遠いところに行ってしまった


弱弱しく 何かを
つかみたいように上げた手を
思わずぼくは
両手でつつんだ
すると 荒い息が
おちついてきて
ゆっくりと目を開けたんだ
だれなのか 確かめるように
それから 目で
さよならと言って
閉じてしまった


あの時 
つつんだ手に
そっと くれたんだ
空に 雲に
緑の中に
山に 海に
花の中に
いつでも
会いたくなれば
えがおの 
おじいちゃんに会える


目には見えない
キップを