老いの何だか切ない日々のポエム画廊喫茶

朝起きて今日一日が始まるコーヒーを淹れるときめき。残りの人生、毎日全力投球。

銭湯でいつも出会うがんこじいさん



銭湯でいつも出会う がんこじいさん
湯船で石か岩みたいに じっとしていて
ドキドキ ぼくらが 入ろうとすると
「こら ぼうず
かかり湯をして入らんか!」
ぼくらは すごすご しょんぼりと
シャワーを浴びた


銭湯でいつも出会う がんこじいさん
真っ赤な顔で長い間 つかっていて
スイスイ ぼくらが うっかり泳ぐと
「こら ぼうず
学校で何ならっとるか!」
ぼくらは ぶくぶく もぐりながら
ゆでだこになった


銭湯でいつも出会う がんこじいさん
湯上りたばこぷかりぷかり すいながら
ワイワイ ぼくらが 上がろうとすると
「こら ぼうず
体をふいて出てこんか!」
ぼくらは ぬき足さし足で バスタオルとった


銭湯でいつも出会う がんこじいさん
なぜだかとんとこのところ 見かけない
ノビノビ ぼくらは 泳いでみたけど
「こら ぼうず
背中を流してくれんか!」
ぼくらは いつしか 物足りずに
おじいさんをまねた


銭湯でいつも出会う がんこじいさん
病気になってひとりぼっち 寝てるそうだ
ゾロゾロ ぼくらは へいからのぞいた
「こら ぼうず
柿がうれたぞもいで行け!」
ぼくらは びっくり そのあとで
歓声をあげた


銭湯でいつも出会う がんこじいさん
病気なおったか湯船で すましてた
ガヤガヤ ぼくらが 入ろうとすると
「こら ぼうず
かかり湯をして入らんか!」
ぼくらは なんだか おかしくて
おじいさんと笑った



銭湯でいつも出会った がんこじいさん
やっぱり病気だけには 負けたらしい
ワァンワァン ぼくらは 声上げ泣いた
「こら ぼうず
いつまでメソメソ泣いとるか!」
ぼくらは 夕やけ 見上げながら
みんなで手をふった





銭湯でいつも出会うがんこじいさん 〜昭和あの日〜