老いの何だか切ない日々のポエム画廊喫茶

朝起きて今日一日が始まるコーヒーを淹れるときめき。残りの人生、毎日全力投球。

俳句「花筏」


 乗り継ぎの列車の旅や花筏



遠き日の記憶たどりて花筏


人間の記憶は、3,4歳まで覚えてるそうです。
僕も微かにぼんやりとその頃までです。
三島由紀夫は2歳の記憶があると本で読んだことがあります。やはり、凡人とは頭が違うのでしょう。


はっきり思い出せるのは幼稚園児の頃です。友だちや先生のことも思い出せます。祖母に手を引かれて園まで畑の小道を行ったこと。小さな木の橋があって、川を覗くとオタマジャクシがいたこと。友だちと泥だんごを作ったこと。まん丸にして表面をツルツルに輝かせたこと。それを園と隣接した寺の石垣のくぼみにそっと隠したこと。そうしておくと、泥だんごが石のように硬くなるんだと僕も友だちもみんな信じていた。
だけど、楽しみにしていたそれを取り出して見ると、あのつやつやとしていた耀きは無くなっていて、持った軽さに驚いた。この時、何かイヤな予感がしたのを覚えている。
でも確かに硬くはなっていた。石になったんだという喜び。
みんな、羨望の眼差しで僕の手のひらの上の、石になった泥だんごを見つめていた。僕は指でつまんで得意げにみんなの顏の前に見せてあげた。
「すげー!」「カチカチになっちょん!」「石んごたん!」
僕は、自信満々で石になったそれをみんなに見せつけた。そして、ビー玉を目の高さから落とすように、地面に落として見せた。
すると、あっけなく真っ二つに割れた。
僕も驚いたがみんなも「あっ!」と言ったビックリした目をした。そして上げた声を口から出さずに、目を伏せるようにしてそそくさと園に戻って行った。
友だちの、声を出さない優しさだった。





五才の頃 中島みゆき 【cover】