老いの何だか切ない日々のポエム画廊喫茶

朝起きて今日一日が始まるコーヒーを淹れるときめき。残りの人生、毎日全力投球。

喫茶店の想い出その4

18のとき 会社の帰り道に見つけた喫茶店
まだオープンして間もない「ぽえむ」
何といっても名前に惹かれた
それは 永島慎二の漫画に出て来る
阿佐ヶ谷にある喫茶店「ぽえむ」と書体も同じ 
ひらがなの「ぽえむ」であったから


細い階段を上がった二階にあった
ドアを開けたすぐのところにカウンター席
奥に 二人掛けと四人掛けの
テーブル席が四つほどあったろうか
僕は初めてカウンター席に座った
それは阿佐ヶ谷の「ぽえむ」に浸りたい気持ちだった
行ったことはないけど 想像力で
見つけた「ぽえむ」の看板を見上げた時から
心が躍り始めていたのだ


マスターは漫画のマスターとは違うけど
それは違って当たり前なのだけど


コーヒーはサイフォン式で美味しかった
プクプクと小さな湯玉がフラスコに沸いてきて
やがてじきに大きな湯玉になり
筒を上って たちまちコーヒーの香が広がる
そして 抽出して濾過されたコーヒーが
フラスコに一気に下りて来る


これだよ これだ
僕が求めていたコーヒーは
そんな興奮を隠して僕は
一杯の香り高いコーヒーを味わった
通を気取り始めていたのかもしれない
砂糖とミルクをまだ
たっぷり入れて飲んでたくせに


小腹が空いててトーストを注文したかもしれない
いつからかコーヒーと一緒に
トーストをたのむことが多くなった
それは 家で食べるトーストとは何か違って上品に思えた
そのわけは マーガリンとバターの違いが
風味と味に左右していたのかもしれない
それと 耳を切って形よく2つに切られて皿に載っていた


昔の喫茶店で出すトーストは
たいていそんなふうにして皿に載っていた
家で真似てみたことがあるが
あんなふうにきれいには カット出来なかった
家の包丁では無理があったのかもしれない